(番外編)デジタルアンプケース作成・・・前編

ブログの更新を数日サボってしまいました。①体調が悪かった、②仕事が忙しかった、③ネタが尽きた、これらのいずれでもなく、ある作業に没頭していたためです。
それは、長年の懸案であったデジタルアンプのハードウッドケース作成です。
長文となりますが、木目フェチ・木材フェチの方、オーディオ好きの方はぜひお付き合いください。

かつて購読していた「Stereo」誌に、Luxman社とコラボしたデジタルアンプ LXA-OT1、LXA-OT3が付録としてついてきました。それぞれ2012年、2014年だったと記憶します。基盤にパーツが取り付けられただけの製品ですが、私めのメインスピーカーであるDiatone DS2000HRをもドライブさせる実力があり、音質的にも付録とは思えないほどのクオリティでした(メインアンプのSansui907DRを修理中は代用させたほどです)。Stereo誌上やネット上で読者の皆様がそれぞれ意匠を凝らしたケースを作っているのを羨ましく思っていましたが、自分には技術も工具もなく、OT1は剥き出しのまま、OT3は百円ショップの木箱に穴を開けて使っていました。


現在、私は20本ほどのギターを所有していますが、一つの共通点があります。それは「木目が見える」ということです。フルアコ、セミアコ、ソリッド、アコギ、ガットなどの機種の違い、オイルフィニッシュ、ナチュラル、サンバースト、シースルーなど塗装の違いこそあれ、全ての個体が木目が見えており、木目の見えない塗りつぶし塗装は1本もありません。ギターを買う時の基準も、音や操作性よりも「木目が美しい」ことを第一条件にして来ました。(Byrdlandの虎杢の背中や首筋などゾクゾクします。アホです。)

ギターアンプも同様です。マホガニーキャビネットのPeterson P-100G、もともとホワイトトーレックだったものをK-Studio様にてブビンガキャビネットに変更いただいたMesa Boogie MarkⅡ、Tweed仕様を近所の高名な建築士の方に桜材でキャビネットを製作いただいたCarvin のVintage16、といずれもハードウッドキャビネット仕様のものを使用しています。(実際の音出しは住宅事情からもっぱら16WのCarvinです。)

それほど無類の「木目マニア」であり、万年筆、ボールペン、シャープペンなどの文房具、スマホケース、ライター(喫煙していた頃)、ツボ押し棒など身の回りのものもできる限り美しい木目の木製のものを使っております。

従いまして、当該2機のケースについても、いつかは木で、それも木目の美しい銘木ハードウッドでと思い続けていました。
しかし、先述の通り、技術も工具もなく、一時期は専門業者に依頼しようと問い合わせ等もしたこともありましたが、わたくしめのわがままでなかなか折り合わず、いっそ自分で作ってしまえと思いつつも、多事を言い訳に重い腰があがりませんでした。

しかし、先日、Amazonから花梨材のシャープペンシルをお勧めメールによって購入したところ木目の美しさにノックアウトされ、神の啓示のように花梨材で作ることを心に決めました。
ということで、思い立ったが吉日、構想12年(実質は延べ3日程度?)の懸案を実行すべく、すぐさま100均の木箱を参考にサイズを測定、WEBで花梨材の小売りをしてくれるところを検索、翌日には酷暑の中矢も楯も堪らず新木場の「もくもく」に向かいました。

新木場は以前勤務していた会社が埼玉県にあったため、埼京線~臨海線の終点として酔いつぶれた際に辿りつきやむなく一夜を過ごす場所としてあまりいい思い出がありませんでした(そもそも飲みすぎて記憶そのものがないときも多々ありました・・・)が、久々に、しかも深夜ではなく昼間に!そして酩酊状態ではなくシラフで!訪れたところ、駅舎まで木材があちこちに使われている「木の町」で、新鮮な感動がありました。

目指す「もくもく」は駅のホームからも見え、改札を出て徒歩3分程度で到着しました。
はやる心を抑え、自動ドアから店内に入ります。


木の香りがうっすらと漂い、大きな木材から小さな工作材までずらりと並ぶ銘木の数々にまず圧倒されます。見ているだけでワクワクし、弁当を持ち込んで一日楽しめそうなほどです。まずは大小の銘木を眺めながら店内を一周し、目的のカリン材を探します。店内は、材の大きさ、厚さなどから各コーナーに分類されており、厚さ5mm程度の各種材が並べられている棚を発見しました。いろいろな種類の材があり、サイズも様々で目移りする中、初志貫徹すべく適する大きさの花梨材も10枚ほど木目の中から美しさを吟味、比較した後420×140×5の材をチョイスします。まずはこの板でOTの分1台を試してみます

カウンターの店員さんにお声がけし、作りたいものを説明、素人作成の完成図と展開図、各サイズを確認いただき、実態にあわせたサイズ修正とチョイスした材から最適な木取りをアドバイスいただきます。別料金ながらカットもお願いできるようなので、仕上げの美しさなどを考慮し、専用器具による専門家の作業を依頼します。

5分ほどでカットが終わり、材が来ましたので、その場で仮組をします。いい感じです。研磨や接着についてもアドバイスをいただき、御礼と会計ののち、店を出ます。お店の方、懇切にご対応いただき本当にありがとうございました。
手持ちの貧相な工具でもとりあえずは事足りそうなので、木工用ボンドと番手の異なるサンドペーパーをホームセンターに立ち寄って購入します。

フロントのヴォリューム穴をキリで穴を開け、リーマーで広げます。なかなか硬い材なので難儀します。「もくもく」でも穴あけ対応してくれるそうですが、受け取りが別日となるとのこと、せっかちなためすぐ作りたいとの思いから、自分でやることとしましたが、プロに頼めばよかったかなと少し後悔します。

穴開け後、木工ボンドで各板を接着し組み上げます。さすがプロの仕事、誤差はなく、角のはみだしや歪みはほとんどありません。ボンドの乾燥を待つ間、もう1台のOT3について構想を練ります。
仮組してみて、100均の材との厚さの違いなどから縦・横・高さともダウンサイジングできることがわかり、サイズをそれぞれ再設定します。木の種類については、同じ花梨にしようとも思いましたが、「もくもく」で見てきた材の中で、花梨の華やかな美しさとは対照的な重厚感を持つ黒檀とすることとしました。エボニーと呼ばれハイエンドギターの指板やフルアコのブリッジにも使われる高級材で、店舗に置いてあったものは茶と黒の縞模様が特徴の縞黒檀だと思われます。

翌日も「もくもく」に向かい、材を選定、カットをお願いしました。家路を急ぎます。

前回同様、まず、ボリューム部に穴を開けます。黒檀は花梨以上に硬い木材なのでさらに大変です。しばし格闘した後、各材の仮研磨を行います。黒檀は油脂分の多い材なので、仕上げにオイルは使用せず、材の磨きだけで仕上げる計画なので、まずは#320のサンドペーパーをかけます。研磨の際に出る粉じんを吸わないよう、暑さをガマンしてマスクをかけて作業します。表面が滑らかになり鈍い光沢を放つようになった段階で接着し、組み上げます。今回も誤差なくはみだしや歪みはありません。

ボンドの乾燥を待つ間、花梨材のほうの接着状況をチェック、隙間やがたつきがないのを確認し、角を棒やすりで削り丸みを持たせます。その後、全体を#320のサンドペーパーで仕上げ、各面のざらつきがなくなったところでワトコオイルを塗布します。木材そのものの持つ輝きととオイルの光沢が重なり美しさが増します。オイルの乾燥を1日待ちます。





それぞれ、次の工程に入るまで時間を要するので、その間、カットの際に生じた端材の活用方法を考えます。美しい木目、捨ててしまうのはもったいなく、結果は後述します。

続く

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