Bill Mason / Gettin' Off (1972) - Wilbert Longmire

サイドの時の方が500倍ワイルドです!

1. Gettin' Off
2. Let's Stay Together
3. Now Run And Tell That
4. Stone
5. Mister Jay




Bill Masonの'72年の作品です。Ohio出身のピアニスト/オルガニストで、牧師の子として生まれ、幼い頃から教会で音楽に親しんだようで、ピアノからスタート、途中でオルガンに転じたようです。先日取り上げた2in1のカップリング相手のGary Chandlerの”Outlook”同様、本作が唯一のリーダー作となりますが、Idris MuhammadやGordon Edwardsなどの強者が参加していて(Gary Chandlerも参加しています)、その筋では重要なミュージシャンの一人だったと推察されます。(愛読書、コテコテデラックスでも、リーダー作の紹介はないもののサイドマンとして名前は出ています)。
本作は、2in1購入時は、自分にとって”Outlook”のオマケ的な位置づけでしたが、なかなかどうして、甲乙つけ難い濃さでした!

<ギターの聴きどころ>

なんとビックリ、ギターはWilbert Longmireです。自分にとってLongmireといえば、3枚目のバラを抱えたチョっと気弱そうな顔が印象的なBensonもどきのメロウなFusionの人だったのですが、本作を聴いてイメージが一変しました。
1曲アップなFunkで、硬めのサウンドで小刻みにカッティングし、鉄壁のリズム隊とともに主役やホーンをバックアップし、疾走感を加えています。リズムや音域がオルガンとモロ被りのような気もしますが、そんなことはお構いなしに、合間にDupreeがやるような(後にRay Parker Jr.もやります)ハーモナイズドチョーキングを交えて突き進みます。音量がかなり上下しますが、これはミキシングの段階での調整でしょうか?ギター側でのこまめなボリューム操作だったらものすごく器用です。フェイドアウトで終わりますが、スタジオではどうやってこの勢いある演奏を止めたのでしょうか?
2曲目はMarvin Gayeの大ヒット曲のカバーです。イントロもメロウなHubert Lawsのフルートでのバックでも、オブリを交えながら淡々とバッキングしています。主役のオルガンソロが始まってこれから盛り上がるかと思われたところで極めて不自然に曲が終わってしまいます。調べたところ、オリジナルのLPでは8分の長弱のようで、CD化されるにあたってカットされたようです。2in1で全体を収めるための時間調整?全部聴いてみたいですが、オリジナルLPは目ん玉飛び出る値段ですね・・・・
3曲目もヘヴィなJazzFunkで、ここでもフリーなカッティングで曲にアクセントを加えています。中盤にはGrant Greenを彷彿させるようなサウンドとフレージングでソロが入ります。
Longmireの作となる4は、ミディアムにテンポを落としますが、全体の重さが増した感じがします。Hubert Lawsもいつもより熱くなってテナーを唸らせ、引き継いでLongmireのソロに突入します。ここでもロングプレイのなかでブレイクを入れたり、トレモロピッキングや速弾き、ダブルストップを交えて変化をつけていますので、激しさの中でも、本能の赴くまま弾き倒すというよりはある程度は計算して組み立てているのでしょうか?エンディングはテナーとユニゾンします。
本作で最もJazzyな5,この曲でもトリッキーなフレーズを織り込みつつ緩急をつけて弾き切りますので、相当のテクニックとフレーズ構成力があると感じました。似たようなプレイでも、Greenや"Boogaloo"Joe Jonesなどよりは少しだけ理知的な印象を受けました。
ギターはメロウとはとても言い難いサウンドですが、箱鳴りを感じますので、その後も永く愛用しているL5でしょうか?のちのTappan Zeeでの三部作でのサウンドと比較するととても同じギターとは思えませんが、サウンドを決定づけるのはギターの特性よりも、弾き手のプレイスタイルであることが立証されていると思います。そして、Longmireさんの本当にやりたかったのは本作のようなものなのかTZ三部作のようなものなのかどっちなのでしょう?TZ三部作のあとレコーディングが途絶えてしまいました。
なお、Bill Mason,Idris Muhammadとともに、サックスのRusty Bryantの"Fire Eater"にも参加し、本作以上に熱いギターを弾いています。(「コテコテデラックス」で紹介されており、Bill Masonがキースエマーソンの1/500のテクニックと最大級の賛辞を受けています。私はキースエマーソンは一度も聞いたことが無いのでわかりませんが。)しかし、Longmireさん、ソロ作よりサイド参加の方が500倍ワイルドとは!


Emotional度♡♡♡♡♡
Bluesy度♡♡♡♡
Mellow度♡♡ 2が全部収録されていたらもっとアップしたかもです
酒のお供度♡♡♡♡

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Bill Mason / Gettin' Off (1972) - Wilbert Longmire” に対して2件のコメントがあります。

  1. 縞梟 より:

    こんにちは。
    お互いこの2in1のおまけ扱いが異なりますが(私の場合こちらがメイン(笑)
    Wilbert Longmireさんといえば、エリック・ゲイルやコーネル・デュプリーが参加している
    「Sunnyside Up」(目玉焼き)が有名ですが、あまりにもボブ・ジェームスによる
    第二のベンソン推しがあからさまでdomon@guitarさんなら的確に違いが判るのでしょうが
    私はこの3人のギタープレイの違いがいまいち分からず悶々とした1枚でした(苦笑)

    (PS)
    キース・エマーソンさんはE,L&Pというプログレバンドの人気鍵盤奏者で
    楽曲以外でもステージパフォーマンスに力を入れていてオルガンを
    電源コードごと引き回して倒したり、短剣さしたり日本刀で切りかかったり
    あげくの果てはグランドピアノを演奏しながら空中回転した方ですが
    決して色物ではありません(笑)

    https://youtu.be/uSm5IQFaTZA?si=qM7yTl5hEga6FKhF

  2. domon@guitar より:

    コメントありがとうございます。
    TZ三部作はオシャレな内容とオシャレなジャケット(目玉焼き、白葡萄、バラの花)でしたが、この時代のLongmireさんはさしづめ、ホルモン焼き、ホッピー、豚バラ、という感じでしょうか?でも、不思議に胃もたれしません。どっちがLongmireさんの本質なのでしょう?
    BJは、優れた音楽家なのでしょうが、駅伝で言えば青学の原監督と共通するビジネス上の山っ気が強い気がして手放しで好きになれません。売れ線狙い、物量大投入で、先日亡くなられたQJのポジションを狙っていたのでしょうか?原監督、BJのファンだったら申し訳ありません。ではでは

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