五輪真弓 / Personal (1994) - 松木恒秀

松木さんのプレイ、難しいサウンドを使いこなし表現しきる名人芸です。

 1. そこにあなたが
2. 忘れえぬ街
3. 悲しみにまかせて
4. See you again
5. 母の肖像
6. 太陽の彼方に
7. めぐりゆく季節
8. 今は一人じゃない
9.港
10.この道はるかに



五輪真弓さんの'94年の作品です。70年代のデビュー以降コアなファンから支持され、'80年代に入ると「恋人よ」のヒットで一気に知名度が上がった一方、ヒット以降の作品については従前からのファンからは売れ線に走ったと批判的な声もあったとのことです。(余談ながら近藤房之助さんも「踊るポンポコリン」のヒットで昔からのBluesファンから絡まれた、みたいなことを言ってました)
80年代の後半からは、結婚・出産のためこれまでよりはペースは落ちるもののコンスタントにアルバムを発表、本作は深町純さんとの共同プロデュースで製作されています。歌詞の想像力やメロディの美しさは従前通りですが、以前のように尖った部分が丸くなり、全体的に優しさが全面に出されている印象を受けました。
Carlton参加作を知ったことをきっかけに'00年代から五輪さんを聴き始めアルバムを集める中で、ブックオフの100円ワゴンセールで手に入れた1枚です。なぜ100円だったのかというと、インナーがないためのようです。従い、参加ミュージシャンの詳細等はわからないままです。

<ギターの聴きどころ>

しかし、聴いてビックリ、4と8のギターは絶対松木さんです。
確認のため、インナー付きの盤を買い足そうかとも思いましたが、後にTwitterでフォローさせていただいている松木さんに詳しいベーシストの方もこの2曲を松木さん参加曲としてYoutubeにあげておられた記憶がありますので、間違いないと思います。
80年代中盤以降、打ち込みや電子音の定着でセッションミュージシャンの活躍の場が狭められてしまい、松木さんもレコーディング参加とCDなどで聴ける機会は激減しましたが、一方でサウンドもプレイもますます円熟し、聴かせて酔わせるギターになっており、この2曲でもその本領を発揮しています。
どちらもスロウで、ダブルストップのスライドやハンマリング、プリングを駆使したバッキング、タメを聴かせつつ時に鋭く突っ込むオブリやソロなど、音数少ないながら曲をメロウに彩ります。この時期のサウンドの特徴として、かなりアンプのヴォリュームを上げて(あるいはOver Drive系のエフェクターで)ドライブさせていると思われ、サスティーンを稼ぎながら、極弱いピッキングを基本としてナチュラルサウンドに近づけつつ強弱によりメリハリをつけてサウンドも変化させています。フィンガリングやピッキングの微妙なニュアンスが表現できるサウンドである一方、ほんのちょっとのタイミングのずれやピッキングのコントロールミスでアラが目立ってしまい、本当の達人でないと使いこなせない危険なサウンドであると思われます。もちろん、松木名人は難なく使いこなし、水墨画のように見事に濃淡を表現しています。さすが!

参加作も音数も減っていく一方の松木さんの貴重な名人芸、皆様もぜひ聴いてください。







Emotional度♡♡♡
Bluesy度♡♡♡♡
Mellow度♡♡♡♡
酒のお供度♡♡♡♡

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