Stanley Turrentine / Don't Mess With Mister T. (1973) - Eric Gale
Gale ファンはB面まで待ってください。
<追記>CDのみのボートラこそGaleファン必聴です。
A1. Don't Mess With Mister T. 2. Two For T. B1. Too Blue 2. I Could Never Repay Your Love <追記>CDのみのボートラ 5. Pieces Of Dreams 6. Don't Mess With Mister T (Alternate Take) 7. Mississippi City Strut 8. Harlem Dawn Stanley Turrentineの'73年の作品です。'71年にBlue NoteからCTIに移籍、CTIでは5枚目となります。プロデューサーはCreed Taylor、アレンジはBob Jamesで、Ron CarterやRichard TeeなどCTIファミリーがバックを務めます。本作を最後にCTIを離れ、Fantasyに移籍しPop路線に舵を切りますが、本作でもSoulのカバーのA1やB2を含み、萌芽があったように感じられます。とはいえ、主役の太く黒いブロウはいつも通りで、バックの落ち着いた演奏と相俟って、全体的にダークでBluesyな雰囲気が漂います。(ジャケットにはヤクザの親分の雰囲気が漂います。この迫力はLPサイズでないと味わえません) 本作も一連のTurrentineのレコードを買い集める中で手に入れた1枚です。1200円ぐらいだったと思います。4曲しかないのに高いな、などと思いつつ購入したのですが、1曲が長く濃い内容であり、曲数が多いと体力を消耗するのでこのぐらいが腹八分目で適量なのかもしれません。
<ギターの聴きどころ>
Marvin GayeのカバーA1、オリジナルの持つ妖しいムードはそのままに、テーマがサックスに置き換わったことでよりムード歌謡感が高まっています。Galeは左から複音バッキングをコードチェンジに合わせてプレイしています。(エレピと被らないように弾いたり弾かなかったりですが) A2、主役とのユニゾンでスタートします。ソロに入ると、ドラムとベースの絶妙なコンビネーションに乗っかり、ジャズコードやシングルノートのバッキングで主役を盛り立てます。(この後あまり聴けないJazzyなプレイです)。ソロはピアノとドラムです。タイトルはTea For Twoのシャレなのでしょうか? BluesyなシャッフルのB1,テーマのユニゾン、コードやオブリなどフリーなバッキングに続き、ソロが始まります。割と抑えめに入りますが、進むにつれチョーキングやビブラート、トレモロピッキングを交えたフレーズで盛り上げ、オクターブ上のプレイでソロを締めます。本領発揮のBluesyなプレイです。ソロのバックで、右から小さく掛け声が聞こえますが誰? SpinnersのカバーのスロウのB4,イントロからタメを効かせたメロウなフレーズを奏でます。テーマのバックでもミュートのアルペジオやダブルストップ、コードを巧みに使い分け、とろけるようなメロディをサポートします。中間部のソロでは、メジャーの曲に関わらずマイナーペンタやブルーノートを駆使したいつものGale節で曲にスパイスを加えます。Teeのオルガンにソロを引き継ぐと、一仕事終えたかのようにコードカッティングに移行し、主役によるクロージングのバックでは同一ノートによるオクターブカッティングで盛り上げ(ゴリ押し?)ます。Galeのソロが聴きたい方はB面から先に聴いてください。 4曲で31分、中身の濃さもあって、あっという間に聴き終えてしまいます。 本記事を書くにあたり調べていたら、お蔵入りになっていた曲が追加されたCDが出ていました(もう廃盤?)。知りませんでした。早速探しに行きます。 <追記>ボートラ4曲の入ったCDをAmazonで入手、聴きました。 6.は未発表曲を集めた"Sugar Man"に入っていたものとほぼ同じです。David T. 参加の”Pieces Of Dreams”にも別アレンジで収録されていますが、David T.参加という大きなオマケを除けば、こっちの方がよりTurrentineらしいプレイに思えます。ただしこの曲でのGaleは小音量での地味なコードバッキングのみです。 次の7からが聴きどころです。1のハードボイルド感は変わりませんが、テンポを上げ、ストリングスやブラスを排除したことで曲がグッと締まっています。GaleもイントロからWahで攻め、バッキングはオルガンとコンビでフリーなリズムです。盛り上がるところでは、思い切りコードをかき鳴らしているところもあります。ソロは抑えめに入るもビンビンと箱鳴りするようなピッキングで、音使いもいつものペンタだけではありませんが、Bluesを感じさせるプレイです。 7のソロでもこれでもかとばかり強いピッキングを織り込み、ツッかりながらも早いパッセージやチョーキングを取り混ぜて弾き倒しています。 8では、ディsトーションサウンドによるヴァイオリン奏法のイントロです。歪み量が変わらないのでディストーションの後ろにヴォリュームペダルを繋いでいるのだと思います。(なお、通常は逆で、前に繋いで歪み量をコントロールしています)この曲でのソロも力の入ったプレイで聴いている方も手に汗を握る緊張感があります。 この3曲、リズム隊のみのシンプルな構成で、前述の通り、ストリングスやブラスなどBJの過度なアレンジがない分、タイトになる一方、密度と熱量が格段に上がっています。 きっと、独裁者Creed Taylorと参謀BJがスタジオから帰った後のメンバーだけによるフリーなセッションだったのでしょうか?ジャケットの迫力はLPですが、内容的にはボートラを含むCDの方に聴きどころがあります。未聴の方はぜひ聴いてみてください。 以下はまたしても私の妄想です。 CT=Creed Taylor ST= Stanley Turrentine BJ=Bob James (1〜4を録り終えて) CT:おい、今日のレコーディングはこれまでだ。何しろ私は忙しいからな。撤収だ!! STとメンバー:では、次のLPに備えて少し練習していきます。メロウで売れ線の5です。(少し弾く) CT:なかなかいいではないか!だが、残るのは自由だが残業代は出さんぞ!お前らのギャラも安くないからな!BJ、帰るぞ!(二人は帰る) ST:威張り腐って気に入らねえ野郎だ!!このあとは俺たちで自由にやるぞ!! ムードミュージックじゃあねえんだからストリングスやブラスなど糞食らえだ!お前ら思い切り弾け!一応テープも回しとけ!どうせ今日で俺はCTI辞めるからな!! ということで6~8が録音されましたが,CTの逆鱗に触れ、お蔵入りになってしまいました。 ※フィクションです。 なお、前述の通り、本作を最後にFantasyに移籍するのですが、よりメロウ路線に方向転換していきます。
Emotional度 | ♡♡♡♡ |
Bluesy度 | ♡♡♡♡ |
Mellow度 | ♡♡♡ |
お酒のお供度 | ♡♡♡♡ |
リンク