Paul Simon / One-Trick Pony (1980)
Galeの濃さが溢れています。
A1. Late In The Evening 2. That's Why God Made The Movies 3. One-Trick Pony 4. How The Heart Approaches What It Yearns 5. Oh, Marion B1. Ace In The Hole 2. Nobody 3. Jonah 4. God Bless The Absentee 5. Long, Long Day Paul Simon'80年の作品です。5作目のソロにして、自身が脚本/制作/主演の同タイトルの映画のサントラです。Stuffメンバーはじめとする参加ミュージシャンもSimon演じるJonahのバックバンドとして出演していた気がします。なんと豪華なドサ回りバンド! タイトルの"One-Trick Pony"、一芸に秀でた名人と解釈するか、一つのことしかできない一発屋と解釈するかで、大きく意味合いが異なりますが、Paul自身は前者、映画の主人公Johnaは後者ではないかと思います。90年代の日本のトレンディドラマでも三上博史さんが久保田利伸さんの主題歌とともに似たような役柄を演じていたような?(これは最後はサクセスストリーというか復活劇だった気がしますが) 映画自体が予想に反して振るわなかったためか、ファンの皆様や評論家の方々からはPaul Simonの一連の作品の中ではあまり評価が高くない様ですが、私はとても気に入っていてよく聴きます。 Gale参加作として音楽雑誌に紹介されていたので購入したのですが、Stuffファン、Galeファンとしてはもちろんのこと、曲の良さ、歌の良さ、バックの良さ、決して他の作品に引けを取らないと思っております。 映画の記憶が曖昧になっているのでもう一度ちゃんと見直したいと思います。 CDも未発表曲が追加されて再発されているようですので、買わねば!
<ギターの聴きどころ>
インナーの個別曲クレジットによれば、GaleはA1,A3,A4,B1,B2,B4に参加しています。 A1,Gaddのノリのいいドラムで曲が始まります。いつもより苦味が増したようなSimonのヴォーカルのバックでのシンプルなシングルトーンのリフに加えて、左から特徴のあるオブリが突っ込んできます。ホーンの返しに続いて、ソロに入ったままフェイドアウトします。いつもよりディストーション強めです。 続く2はHugh McCrackenによるJazzyなアコギバッキングとスライドソロが印象的です。器用ですね。 タイトル曲のライブ録音A3でも、粘っこいプレイでヴォーカルに絡み、ソロも力が入っています。ここでのサウンドは艶やかさを感じます。 左のバッキングはSimon自身です。 ミディアムスロウのA4では、珍しいガットでのソロです。チョーキングやビブラートはありませんが、タメと抑制の効いたGale節です。と思ったら右から、エレクトリックでのオブリが入ってきました。 A5はJeff Mironovが手堅いバッキングでまとめています。 B1もライブ録音で、Bluesyな単音リフにキレとコクのあるカッティングを組み合わせてGrooveを作ります。中盤にシャッフルに変わると ウラのカッティングにオブリを噛ませ、ソロではタメとツッコミで力強いプレイです。テンポチェンジが目まぐるしい中でTeeがSimonと絡み、後半はGaleのギターも加わってくるという大変濃く贅沢な組み合わせで曲が終わります。ギターは輪郭が明瞭なのでコンプレッサーを 強めにかけているかと思います。 スロウのB2では、左のアコギとともにダブルストップやヴァイオリン奏法でムードを高め、盛り上がってくると低音部から高音部までまたがるオブリやソロで曲を濃密なものに塗り替えていきます。 B3はTopeaによるアコギバッキングです。物足りないと思う一方、Galeの濃さから一瞬解放され、小休止的な感覚を持ちました。 続くB4では再びGaleのギターがフューチャーされ、エンディングでも濃い繰り返しフレーズを連発しつつフェイドアウトしていきます。 ラストのB5は、イントロ、Galeっぽいかなとも思いましたが、かなり薄められた感じでストレートから水割りに変わったような印象を受けました。Joe Beckのようです。こういう曲でもGaleはいい味を出すのですが、アルバムの最後は、落ち着いてひっそりと終わりたかったのでしょう。中盤からPatti Austinがデュエットします。 Galeの濃いプレイこそ、最高に個性的で誰も真似できないOne-Trick Pony(もちろん良い方の意味です)でした。
Emotional度 | ♡♡♡♡♡ |
Bluesy度 | ♡♡♡♡ |
Mellow度 | ♡♡♡♡ |
お酒のお供度 | ♡♡♡♡ |
リンク