山本達彦 / Sweet (1992) – 松木恒秀

松木さんの弾かずに聴かせるギター、もはや幽玄の美です。

 1. ファインラインへようこそ
 2. SENTIMENT
 3. 君と輝く夜に
 4. 愛はただそれだけで
 5. そういえばあの日も雨が
 6. STRAY NIGHT
 7. 月に落ちた涙
 8. 夜毎の海
 9. Sweet
10. 朝が訪れるまで




山本達彦さんの'92年の作品です。'78年のレコードデビューですが、音楽活動自体は7歳の時に東京少年合唱隊に参加し、アメリカツアーに参加し、エド・サリヴァン・ショウにも出演したとのことで、早い時期に音楽の素養を身に付けたようです。80年代は大ヒットこそないものの、甘い歌と甘いマスクで多くの女性ファンを獲得(私の周りにも結構ファンがいました)、多くの作品をリリースしています。私個人は、80年代〜90年代は愚かなことに邦楽から意識的に遠ざかっていたこともあり、リアルタイムにはレコードやCDでは聴いていませんでした。
本作も、2010年以降だったと思いますが、ネット情報で松木さんの参加を知り、町田のBookOffで購入しました。80年代のイメージからタイトル通りSweetな内容かと思っていましたが、90年代頭でありながら電子感を感じさせないサウンドに甘さに溢れるものの、歌詞は、全体的にデカダン(死語?)な印象を持つ哀愁や孤独を感じさせる内容で、ちょっと想像したものとは違いました。

<ギターの聴きどころ>

インナーに個別のクレジットがあり、松木さんは1,4,8に参加しています。
本作で唯一ポップと感じる1、軽快なビートに、350のフロントと思われる甘いトーンで甘いフレーズが入ってきます。ヴォーカルが入った後も、中西康晴さんのオルガンと共に、ダブルストップやチョップ奏法による実に絶妙なオブリで盛り上げます。中間のソロも短いながら絶妙なタッチです。
フェイドインから、土岐さんのサックス(こちらも最初の1音で土岐さんとわかってしまう個性です。)のイントロでスタートする4、松木さんはミュート気味のシングルノートを基本とするバッキングで哀感を高めていきます。曲が進むとオクターブリフ主体に転じます。時折差し挟むオブリも絶妙です。
スロウの8、エレピ、ベース、シンセによる薄い薄いバックで、ギターはコーラスがかかったサウンドで、低音量で時々現れる程度で、注意深く聴いていないと聞き過ごしてしまいます。それでも、この楽曲になくてはならない隠し味なのだと思います。
本作でも必要以上に弾かない、ただしその数少ない音で曲のカラーを決め、弾かずに酔わせ、ダイレクトに伝わってくるフレーズは、もはや幽玄の美の領域ではないでしょうか?ギターを弾く方にはわかっていただけると思うのですが、いい曲ほどついつい必要以上に弾きすぎてしまうのに抑制の効いたプレイ、さすが松木さんです。
2,6,7,9は今剛さんです。ナチュラルサウンドでのピッキングニュアンスの活きたプレイも聴きどころです。(2を聴いてください。今井美樹さんとのプレイも聴いてください。)今さんはParachuteやポップスでのプレイの印象が強く、Bluesのイメージがなかったのですが、今井さんのところにも書いた通り、大村憲司さん亡き後、近藤房之助さんがパートナーに選んだほどの達人のようです。他にも名プレイ多数あると思われますので探して聴かねば!
3では、高校時代のバンド仲間であった渡辺香津美さんが間奏とエンディングで美しいガットソロをとっています。
三者三様ですが、この手のギターが好きな方にはたまらない名盤だと思います。
なお、松木さんは前作にあたる"ONCE IN MY LIFE"や、デビュー作の”Sudden Wind”にも参加しています。








Emotional度♡♡♡♡
Bluesy度♡♡♡ 
Mellow度♡♡♡♡    
お酒のお供度♡♡♡♡  

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