Larry Carlton – Four Hands & A Heart, Volume One (2012)

安易な企画ものではなく、Carltonのギターが堪能できる良作です。

 1. Room 335 (La)
2. Nite Crawler (La)
3. Point It Up (La)
4. Rio Samba (La)
5. Don't Give It Up (La)
6. (It Was) Only Yesterday (La)
7. Last Night (Sl)
8. Song For Katie (Sl)
9. Sleepwalk (Sl)
10. 10 P.M. (Sl)
11. For Love Alone (St)
12. Strikes Twice (St)
13. Springville (St)
14. Mulberry Street (St)




Carltonの'12年の作品です。Warner時代の”Larry Carlton”、"Strikes Twice"、"Sleepwalk"の中からチョイスされた曲をエレクトリック、アコースティックの2本のギターと最低限のパーカッション(打ち込み)でリアレンジして演奏されているセルフカバー集で、Carlton自身のレーベルである335Recordsよりリリースされました、内容はそもそも数ヶ月前に先行発売された "Then And Now"に収録されており、1枚目がベスト盤的にオリジナルをチョイスしたもの、2枚目がCD未発表であった”Mr.335 Live In Japan”、そして3枚目が1枚目の曲順通りリメイクした本作となります。
ケチな性分のため、1枚目、2枚目の内容は既にアナログ盤を購入し聴いているのでその分に対してに大枚をはたきたくない、CDになって音が良くなるとは限らない、との思いから買い控え、3枚目だけ別売りで出してくれないかなと思っていたら(そういう要望が多かったのか)本作が単品で発売されたようで1年ほど後にユニオンのJazzのところに置いてありました。すかさず購入しました。先に3枚組を買ったCarltonファンの方々は地団駄を踏んだのでは?

<ギターの聴きどころ>

セールス的な成功とは裏腹に、Wornerとは方向性やプロモートの面では確執があったと後に語っていたCarlton、私めも”Larry Carlton”、"Sleepwalk"はともかく、”Strike Twice”は売れ線狙いの二番煎じの感が否めず、また時代の影響かギターの歪みも強く、数多くあるソロ作の中でもあまり好みではない1枚でした。それらの思いも含め、聞き慣れた曲の数々が30年の時を経てどう生まれ変わったのか興味津々にCDをトレイに入れます。
Sapphire Blue”のボートラのMemphisバージョン、本作に先行したセルフカバー集の”Greatest Hits Rerecorded Volume One”にも収録された代表曲の1から、「裏Room335]とも言われた14までを一気に聴きます。個別曲の解説と感想を書くととんでもなく長くなってしまいますので、サボって、全体的な感想をいくつかまとめさせていただきます。
(1) アレンジが大幅に変わっている
 編成がシンプルになったので当たり前ですが、原曲のメロディを活かしつつ大胆なリアレンジがなさ
 れています。特に、テンポを落とした曲がほとんどです。特に5は疾走感のある高速シャッフルが、
 気だるさまで感じさせるスロウに変身しています。
 12と13も、できるものならコピーしてみろと言わんばかりのスピードを伴った難解フレーズに溢れ
ていましたが、見事にレイドバックしたプレイに変わっています。
(2)歌心が強まっている。
上記(1)と被るのですが、シンプルなアレンジでテンポを落としたことで、テクニックや勢い、華や
かさよりも、ムードや歌ごころを重視したプレイに変わっており、円熟するとともに自身のルーツの
 一つであるBluesへ回帰しています。
 その分、若さゆえの激情は昇華され、内省や達観に変わっているように感じます。特に、やり場のな
 い悲しみや孤独が感じられたマイナのースロウ6,11は、サウンドの変化もあり渋みを湛えた寂寥に
 変容しています。
(3)サウンドが変化している
 オリジナル期は、メインは335とBoogie(後半は一部Valley Artsのストラト)の組み合わせで、
 ピックアップはほとんどフロント、アンプを強くドライブさせかつトレブリーにセッテイングし鋭
 い音も出していました。(当時のインタビューによれば Boogie3つのヴォリュームは全て7、グ
 ライコも使ってハイ上がりとしていたとのことです。)
 本作でも、エレクトリックのメインは1周回って戻ってきた335ですが、フロントだけではなく、
 リアやセンターポジションも多 用しています。1や2のソロなどはリア(あるいはセンターにして
 フロントのヴォリュームを絞っている)だと思います。アンプは Bludtoneか古いFenderと思わ
 れます。1や2などで若干のドライブはあるものの、ナチュラルサウンドが基本で、リバーブですら
 最小限です。また、アコギを多用しており、4や11ではテーマやソロ、1のコードカッティングや
 12のアルペジオなど随所で光るプレイが聴けます。昨年今年のライブツアーでアコギの曲をエ
 レクトリックでやっていたのとは対照的です。
 
上記より、Carltonのギターはソロ、バッキングとも鮮明に聴こえ、コピーをする方などにはもってこいの内容ではないでしょうか?懐古的、安易な企画でファイン以外は不要など、厳しい意見もある作品でしたが、余計な偏見を取り払えば初めて聴いても純粋に楽しめる美しい音楽だと思います。気軽にレコーディングできる構成と内容、ツアーを抑えた今でこそ、過去曲、名曲カバー、X'mas企画ものなど、どんどんこのようなスタイルで発信していただきたいと思います。




Emotional度♡♡♡
Bluesy度♡♡♡♡
Mellow度♡♡♡♡
酒のお供度♡♡♡♡

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