Steve Kipner / Knock The Walls Down (1979) – Jay Graydon, Larry Carlton

ギターの主役はGraydonで、Carltonは大人です。

A1. The Beginning
 2. Knock The Walls Down
 3. Lovemaker
 4. School Of Broken Hearts
 5. War Games

 
B1. I've Got To Stop This Hurting You
 2. Love Is It's Own Reward
 3. Cryin' Out For Love
 4. Guilty
 5. The Ending
 


 
Steve Kipnerの'79年の作品です。60年代から活躍するソングライターで,Olivia Newton-Johnの「Physical」など数々のヒット曲を書いていますが、もともと裏方の人なのか本作が唯一の自身のアルバムとなります。歌も上手いのにもったいない!
また、本作はJay Graydonが初めてプロデュースを手がけたGraydonファンには記念すべき作品でもあります。その人脈からか、Totoのリズム隊であるJeff Porcaro(Ds)とDavid Hungate(B)など、豪華なセッションミュージシャンを集めて録音されています。内容的にも、A1のThe BeginningからB5のThe Ending曲までコンセプトアルバムとなっているいるようで、ジャケットもストーリーを感じさせます。
キャッチーな曲と歌のうまさ、アルバムのストーリー性、精緻なプロデュースとアレンジ、達人たちの演奏、それらの要素が全てシナジーを生み、AORの最高傑作の1枚と言っても過言ではない出来だと思います。(個人的には「Airplay」より気に入っています。)
その割には、CD復刻は頻繁には行われず、アナログも高音が続いていました。私が購入したのは、'99年にAOR名盤シリーズとして2000円未満(だったと思います)でCDが再発された後で、1000円ぐらいまで値崩れしたLPでした。もっと早く買っておけばよかったと
後悔しました。



<ギターの聴きどころ>

Carltonのカテゴリでとり上げましたが、ギター面での主役はGraydonです。初めてのプロデュースで気合いが入ったのか、自らのギターをバッキングもソロもこれでもかとばかり組み入れています。
A1のカッティングから痺れますが、お得意のハモリのドライブサウンドオブリを重ねてきます。リズム隊とのコンビネーションの妙もあり、アレンジャーとしての才能も窺えます。
A2やA3,B2では、なんとCarltonにアコギのバッキングをやらせて、自分がエレクトリックでいいところを持っていきます。Carlton、大人ですね!
ドアリブサウンドのハモリやB5でのハードなロングソロがギターのハイライトと思いますが、個人的にはB3のハーフトーンでのバッキングなど、職人的なプレイにも惹かれます。
"Jarreau"のところでも触れましたが、ギターは60年代初期の赤の335のセンター部にシングルコイルを増設し、フロント、リアのハムもタップ仕様として改造したものだと思います。ソロやリフでの粘りと艶のあるドライブサウンド、バッキングでのストラトっぽいハーフトーンの両方が出せるようにしており、オールドとしてのオリジナル価値(当時はそういう概念はまだ薄かったのでしょうか?)は著しく損なわれますが、1台のギターでバリエーションあるサウンドを出すという実用的な改造のようです。

中高時代、"Jarreau"はヘビロテした一方、”Airplay”はスロウは良かったのですが他の曲は結構Rockだったせいか、だんだんとハモリも「作り物」的に感じて飽きてしまい(80年台の日本でも同様のサウンドやプレイが溢れていました)、自分の嗜好もBlack方面に向かったせいもあって、Graydonへの関心が急速に薄れてしまい、聴かなくなってしまいました。("Peg"や"Otis Redding Tribute"のソロもそんなにいいと思いませんでした。)
時を経て、ニュートラルな気持ちで本作やMarc Joedanなどの参加作を聴くと、プレイヤーとしてもプロデューサーとしても才能溢れるミュージシャンであることが改めてわかりました。他の参加作も改めて聴いてみたいと思います。








Emotional度♡♡♡♡
Bluesy度♡♡♡
Mellow度♡♡♡♡
酒のお供度♡♡♡♡

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