高中正義 / An Insatiable High (1977) -Lee Ritenour
聴くたびに「Good (Bad?) Old Days」が蘇ります。(Ritenourの器用なプレイは流石です。)
A1. Sexy Dance
2. Malibu
3. An Insatiable High
B1. E.S.P.
2. M5
3. Sundrops
4. Good (Bad?) Old Days
高中さんの'77年の作品です。ソロ作としては3枚目にあたり、L.A.録音、Gentle ThouthsやChuck Rainey、Tower Of Powerのホーンセクションなど豪華なメンバーと共演しています。それほど売り上げが期待できないこのジャンルのレコードにこれだけ制作費をかけたというのは、名プロデューサーであった多賀社長率いるキティレコードの高中さんへの思い入れと海外勢にも負けないという自信や情熱があったのだと思われます。
個人的な話で恐縮ですが、私が14歳でエレキギターを買った後、中学から高校の前半まで高中さんに夢中になりました。人と同じことをしたくないという思春期初期の拗れた思いからヤマハのセミアコSA700を買い(高二の時にPlayer誌の売買コーナで中古のSG1000も買いました)、周りがハードロックやヘビメタ一色である中、Fusionを聴きました。きっかけになったのは兄の友人が貸してくれた本作、"Saudade"や"T-Wave"などの数枚の高中さんのLPで、CarltonやRitenourなどはとっつきにくさを感じて良さがわかるまで少し時間がかかった一方、高中さんはキャッチーなメロディーやカラフルなギターサウンドですんなり入り込め、カセットテープにダビングさせてもらって繰り返し聴きました。"Can I Sing"や”夏・全・開”は発売日を心待ちにして新品を買いました。高校後半〜大学時代はBlack系中心に聴いていたので5~6年のブランクがありましたが、卒業して数年後にジャンルに捉われず好きな音楽を聴きたいという思いが目覚め、懐かしさもあって高中さんのレコードをコンプしました。高中さんは相変わらず人気がありましたが、世の中すでにCD時代、叩き売られたであろうアナログを全盤ワンコイン以内で入手できました。
<ギターの聴きどころ>
インナーには高中さんのアイドルばりのスナップショットの裏(表?)に個別曲の参加ミュージシャンがカタカナで書かれており、Ritenourは全曲に参加しています。聴く限り、基本、右とセンターが高中さん、左がRitenourです。
キャッチーなA1では、T.O.P.のホーンに隠れほとんど聴こえなぐらいの小音量ですがお得意のコンプサウンドでポコポコミュートやカッティングです。
Patrice RushenをフューチャーしたA2ではポコポコミュートやオブリも交えたコードでバッキングを主導します。(W.W.Watsonからパクったチャカポーンフレーズもピンポイントで入れています)右では高中さんがガットもプレイしています。Ritenourが"In Rio"を録音する2年前で、もしかしたらRitenourが高中さんにインスパイアされた?
長尺のA3では、隙間を縫うようなオブリに加え、後半には二人の掛け合いが聴けます。プレイスタイルやサウンドの違いも興味深いところです。Ritenourさん、結構な負けず嫌い振りを発揮しております。後半のアコギ(右ガットメロ、右バッキング)がいい感じです。
Jim GilstrapとWatersをフューチャーした歌物のB1ではコンプを効かせたキレのいいカッティングで、パターン化していないフレーズがRitenourらしさを感じさせます。
LatinのB2ではバッキング、高中さんとのユニゾンやハモリ,中間部の短いソロと引き出しの多さや器用さを感じさせる(見せつける?)プレイです。きっと余裕綽々に引いているのでしょう。
B3でもエフェクターを効果的に使った多彩なバッキングで、センスや確かな技術を感じさせます。
ラストのスロウ、夏の夕暮れにぴったりの美しい曲で、高中さんの曲で最も好きな曲の一つです。主役のリリカルなテーマを活かすべく、ここでも多彩なパターンを駆使してバックアップしています。ブリッジ部のプレイヤユニゾンも見事です。
ブログの性格上、Ritenourの話ばかりですみません。
今更ですが、高中さんは自作のポップで美しいメロディをギターで表現する総合的な音楽家であって、Fusionギタリストではなかったのでは?勝手にと思っております。本作でのRitenourの器用なプレイで特に感じました。また、'77年の時点ですでにここまで完成されていた音楽性はもっと再評価されてもいいのではと考えております。
当時はラジカセ中心に聴いた曲も、その後、それなりのオーディオセットで聴くと音の細部まで聴こえます。(本作で言えばAbeのピックを使ったプレイとRaineyの弾むようなベースの違いなど)、当時夢中になった音楽を聴くたびにたくさんの夢があった「Good (Bad?) Old Days」が蘇る懐かさと新鮮な感動があり、いい音楽をいい音で聴けることは至福の喜びです。
今回も自分語りですみません。思い出を辿る年齢になってしまいました・・・・
Emotional度 | ♡♡♡♡ |
Bluesy度 | ♡♡ |
Mellow度 | ♡♡♡♡ |
酒のお供度 | ♡♡♡♡ |
懐かし度 | ♡♡♡♡♡ |
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