Phillip Walker Band With George ‘Harmonica’ Smith / The Blues Show! Live At Pit Inn (1979) – 山岸潤史、吾妻光良

本場Bluesmanと日本の若手(当時)の記念すべき共演です。

A1. Hello My Darling
 2. Laughing & Clowning
 3. Yonders Wall
 4. That's Alright
 
 
B1. Blues Blowin Up
 2. Mississippi River Blues
 3. Strange Things Happening
 4. Johnny B. Goode
 5. Hello Central

 
 
11月6日、福生ブルースフェスティバルに行って参りました。通算15回目、コロナ禍の影響で3年ぶりの開催とのことでしたが、雲ひとつない晴天、こじんまりとしつつも開放感のある屋外(大多摩ハムの駐車場)での近藤房之助さんや中島正雄さん、小安田憲司さん、菊田俊さんなどベテランを中心とした熱のこもったプレイが見聞きできて大感動です。調子に乗ってビールを飲みすぎてしまいトイレが遠いため肝心なところを見逃してしまったのが残念ですが、会場全体が大盛り上がり(ご年配の方が多く、私めでも若輩の部類に入るのでは?)で、本当に楽しい1日でした。

ということで、最近また自分の中でBlues熱が高まりつつあります
本作はPhillip Walkerが自らのバンドを引き連れ、George 'Harmonica' Smithも参加した六ピでの'79年のライブの実況盤です。
Louisiana生まれ、Texas育ちのBluesmanで、1973年に初リーダー作を発表、その後も10数枚のLP、CDを発表しています。Texas系ギターを基調としながら、Chicago、B.B系のスクイーズ、トリッキーなフレーズまで幅広いスタイルのギターをプレイし、若干ハイトーンの渋いヴォーカルで貫禄も十分です。遅咲きですが、'37年の生まれなのでalbert Collins('34年生まれ)、Buddy Guy('36年生まれ)の世代で、この時40代、脂の乗り切った時期の熱演です。
高校生の時に、数は少ないながらBluesを扱っていた(P-VineやVividも)地元のレコード店に置いてあり、赤いセミアコ(のちに330と知ります)のジャケットのかっこよさと、当時夢中になり始めた山岸さんが参加していることもあって新品で購入しました。自分にとって最初の数枚目に買ったBluesのレコードで、大人の世界を覗くような背伸びした気持ちで聴いていた思い出深い作品でもあります。振り返ると、もう40年近く聴き続けていることになります。






<ギターの聴きどころ>

主役はもちろんPhillip Walkerですが、山岸さん(この時26歳)がA3にゲスト参加、吾妻さん(この時23歳、まだ学生)がそれ以外の曲にサイドギターとして参加しています。
デビュー作に収録されたPop?なA1からスタートします。吾妻さんは独特のノリで定番の低音リフを刻みます。主役はヴォリュームコントロールでドライブトーンをコントロールし、ソロ、オブリ、バッキング、そしてヴォーカルと一人4役を楽々とこなします。
同じくデビュー作からのスロウA2、吾妻さんは9thコードバリエーションによるバッキングです。主役は熱が入りシャウトを交えながらの意ヴォーカルと結構な速弾き交えた緩急のあるソロで盛り上げます。ブレイクなど、きめのフレーズもバッチリ決まっていてカッコいい!
スタンダードのA3,山岸さんは、低音弦によるシャッフルのリフバッキングから2コーラスソロを取ります。いつも通り熱のこもったプレイですが、少々力が入りすぎたのでしょうか、勢いがあるのですが平坦な印象を受けてしまいました。一方、Phillip Walkerは山岸さんの1回目のソロではチョーキング、三連畳み掛け、複音ソロ、と多彩なパターンを次々と繰り出し(一部音が外れていてスリリング)、2回目のソロでは、後半コードが変わろうともバンドがブレイクしようとも止まらない同一フレーズの連続で、山岸さんに胸を貸すどころか、技でも力でもねじ伏せてやろうと言わんばかりの大人気ない?大熱演です。
A4もスタンダードで、George 'Harmonica' Smithも参加してのChicagoスタイルのバックに乗って、自身もChicagoスタイルでプレイします。盛り上げるところ、抑えるところのメリハリが見事です。吾妻さんも後半にソロを取ります。いつもの爆発的なプレイは抑えつつも自身のスタイルで引き切ります。触発されたのか、Waikerもその後、さらに熱いフレーズやスキャットで応酬します。
George 'Harmonica' SmithをフューチャーしたB1では、Walkerと吾妻さんのコンビネーションバッキングです。Walkerは多くのサイドマン経験を持つだけあって、ツボを押さえた的確なバッキングです。吾妻さんは小技も織り込みながらの多彩なプレイです。呻いているのはSmith?
野太いSmithのヴォーカルが聴けるダウンホームなスロウのB2もコンビネーションバッキングに続いて、吾妻さんのソロが炸裂します。Albert Colinsに影響を受けたというトレブリーなサウンドと、チョーキングと鋭角的な畳み掛けの組み合わせフレーズ、低音のスラップ、ハイポジションのチョップなど個性にあふれたプレイで圧倒します。負けじとWalkerもやや歪みの強いサウンド&トリッキーなフレーズで応戦しますが、インパクトでは吾妻さんの勝利ではないでしょうか?
多くのカバーがあるB3でも、Walkerは勢いも泣きもあるフレーズで技量と歌心を見せます。
B4はちょっと勘弁ですが、吾妻さんが8ビートを刻んでいるのは珍しいのでは?(微妙にガッカガッカとスイングしてますが)
デビュー作(弾き語りのソロでやっています)に入っていたB4でこのレコードは幕を閉じます。
インナーの写真では、ギターは山岸さんが345(ストラトっぽい音にも聞こえましたがバリトーンスイッチをいじっているのかもしれません)、吾妻さんがこの後も長く使い続ける340です。
日本にようやくBluesが根付き始めた頃の本場からのBluesmanの来日、是非その場で見てみたかったライブのひとつです。
Philip Walkerは、Buddy GuyやAlbert Collinsほどのビッグネームにはなれませんでしたが、自分が聴いた範囲では、どのアルバムもハズレがない味も勢いもある内容です。ぜひ聴いてみてください。

Emotional度♡♡♡♡♡
Bluesy度♡♡♡♡♡ 
Mellow度♡♡
酒のお供度♡♡♡♡♡ 

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