上田正樹 / 上田正樹 (1977) – 山岸潤史

10人の実力派ギタリスト揃い踏みです。生々しさと熱さに溢れています。

A1. 悲しい日々
 2. その日暮し
 3. 双六の上で
 4. 南の街から
 5. こんなに遠くまで

 
B1. 感じるままに
 2. 道頓堀の柱時計
 3. 寒い野原
 4. やせた口笛で
 5. ラブ ソング
 


 
上田正樹さんの'77年の作品です。前年の7月にサウス・トゥ・サウスを解散し、本作がソロデビューアルバムとなります。デビュー盤ながら自身がプロデュースを担当し、当時の新進気鋭のスタジオミュージシャンや知己のバンドマンなど豪華なメンバーを集めてレコーディングされており、所属のキティレコードの期待の高さが窺えます。しかし、発売の2ヶ月後、大麻取締法違反容疑で逮捕されてしまい、楽曲、上田さんのヴォーカル、バックの演奏全てが充実した内容を持ちながら封印された状態に追い込まれてしまいます。(その影響かどうかはわかりませんが、いまだにCD再発されていないようです。)
そのせいか、上田さんのほとんどのLPを安箱からワンコイン以内で購入したのですが、本作と次作の"Push&PUll"は500円を超えた値段で購入しました。
上田さんのアルバムもどれも好きなのですが、「悲しい色やね」以降80年代のアルバムはどこかセールスを意識してオーバープロデュースされた印象があり、それと比較すると本作と次作はありのままの姿の生々しさを感じます。青系の寒色で統一されたジャケットですが、内容は熱さに溢れているように感じました。

<ギターの聴きどころ>

帯には参加ミュージシャンが記載されており、それによると10人のギタリストが参加しています(EG8人、AG2人)。さらに、インナーには個別曲のクレジットがあり、どの曲で誰が弾いているのか書かれています。中学の頃散々聴いた(今でも時々聴きますが)高中さんや、サウス・トゥ・サウスの盟友のQunchoさん、スタジオ畑の椎名さん、松原正樹さんなどが書かれていますが、一番のお目当てはWestRoad B.B.出身の山岸さんと塩次さんです。山岸さんはスロウのA5で何と高中さんと共演しています。イントロからヴァイオリン奏法+ディレイの印象的なフレーズが入ります。これは高中さんの十八番です。中間部ではドライブサウンドが左右から聴こえます。最初に入る左が高中さんで、負けじと右から入ってくるのが山岸さんと思います。しかし、高中さんは山岸さんからの挑戦状を巧みにヴァイオリン奏法+ディレイでいなします。技ありで高中さんに1票です。山岸さんは不完全燃焼気味でしょうか。
高中さんは、A3では数本のギターを重ねており、Funkyなバッキングとロックテイストが強いソロをプレイしています。77年は"TAKANAKA"と”An Insatiable High”をリリース、夏色Fusion全開だった時期だっただけに意表を突かれましたが、RockやBlackにも精通しておりさすがの幅広さです。
塩次さんはA2とB3に参加しています。A2は椎名さんとのコンビです。右がフェイザーをかけたバッキング、右がストラトにコンプをかけたサウンドでの小技を効かせたオブリがメインです。二度のソロは右です。Bluesyでよく歌うソロで、塩次さんかとい思いましたが、コンプが強くかかっていることと、伸ちゃんにしてはスムースに流れているのであるいは椎名さんでしょうか?(あるいは名前が伸二ではなく伸次なので別人だったりして?)
B3では、土屋潔さんとのコンビで、フェイズサウンドでN.O.のセカンドラインビートを刻む左が土屋さんで、右のオブリや短いソロなど塩次さんでしょうか?いずれにしても、ちょっとらしくないプレイに感じましたが、この頃はBluesだけではなくStuff的なこともやってみたいと言っていたので色々トライしていたと思われます。
B1は盟友Quncho(堤和美さん)と松原さんでのコンビです。左のバッキングが松原さん、右のワウソロがQunchoさんでしょうか?
意外に思えたのはA4での松原さんのプレイで、左のロイクなバッキングや緩急のあるよく歌うソロは初めて聞いた時は塩次さんかと思いました。松原さんもよく歌うソロをプレイしますが、ユーミンや松田聖子さんでのディストーションサウンドのイメージが強く、RitenourやJay Graydonのようなタイプと思っていたので・・・この思いは次作の"Push&Pull"のソウルフルなプレイを聴いて払拭されることとなります。
不倫ソングの奔り?のB5、上田さんのヴォーカルは和製Ray Charlesと呼ぶにふさわしい素晴らしさです。ギターについてもDupreeっぽい味わい深いプレイが聴け、これも初めは塩次さんかQunchoさんかと思いましたが、井上憲一さんのようです。永井隆さんも絶賛しているギタリストのようで、これは他の参加曲も探して聴かねば!
本作、未だサブスクにもないようですが、アナログ盤は時々見かけますので見つけたらぜひ買ってください。






Emotional度♡♡♡♡♡
Bluesy度♡♡♡♡
Mellow度♡♡♡
酒のお供度♡♡♡♡

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