West Road Blues Band / Blues Power (1975) - 塩次伸二、山岸潤史

すべてここから始まりました。

A1. Tramp
 2. T-Bone Shuffle
 3. It's My Own Fault
 4. Cold Cold Feeling
 5. I'll Drown In My Own Tears

B1. Ain't Nobody's BusinessIf I Do
 2. First Time I Met The Blues
 3. Yakty Yak
 4. Blues After Hours





日本のBluesの草分け、West Road Blues Bandの'75年のデビュー盤です。永井隆さん (Vo)、塩次伸二さん (G)、山岸潤史さん (G)、小堀正さん (B)、松本照夫 (Ds)によるBluesカバー盤です。Bluesに目覚めた高校生のころ、地元のレコード屋にはおいてなく、取り寄せることも難しいと言われたので、修学旅行で京都に行った際に、風呂の時間に抜け出して本作とライブ盤を買いに行きました。初めて聴き終えた時、自分が大人になったような気がしました。それ以来、もう何千回、何万回聴いたかわかりません(ちっと盛りすぎか)。
上京した頃には、再結成しており、高円寺Jirokichiや日比谷野音でのブルースカーニバルなど、追っかけのように必ずライブに行きました。Jirokichiでは、テーブルが撤去され所狭しと椅子が並べられてのライブでしたが、それでも収まらず、いつも入口まで立ち見客が溢れるほどの人気でした。

<ギターの聴きどころ>

ギターは、右が伸ちゃん、左が山岸さんです。全曲カバーですが、こちらを先に聴いていてここからオリジナルに遡っていきました。
Lowell FulsonのA1でスタートします。オリジナルよりもFunk度を増した演奏で、単にコピーするのではなく、消化して自分達の持ち味を加えていることが1曲目からわかります。
T-BoneのA2も、伸ちゃんのフレーズは原曲に忠実ですが、全体のアレンジはモダンです。ここでもピアノのソロが入るなど、バンドとしてのアンサンブルを大事にしていたのでしょうか?
B.B. はじめ多くのカバーがあるA3は、伸ちゃんのダイナミクスのあるソロが光ります。私めは、山岸さんのプレイをコピーして9thのバッキングを学びました。(それまでは7thしか知りませんでした)活動拠点の京都への想いが詩に現れています。
再びT-BoneのA4はジャズバラード風に仕上げられ、サポートのRhodesと要所でしか弾かないギタープレイが渋いです。ここでも本作とは関係ないですが、Jimmy Jonnsonはこの曲をマイナーキーでやっており、泣きのギターが炸裂していてこちらも気に入っています。
自分の涙に溺れてしまうというものすごい歌詞のA5でも、弾きすぎないのに泣くギターと、ピアノとオルガンがいい味を出していて、ホトケさんのヴォーカルにも熱が入っています。金子マリさんの絡み、ラストのシャウトの掛け合いなど、ライブのようです。
これまた多くのカバーがあるスロウのB1も、伸ちゃんの表現力が見事です。サビのディミニッシュの3度駆け上がりフレーズを山岸さんのバッキングから学びました。バイテンになったところのリズム隊のノリの良さもすごい!
B2では、山岸さんのゴリゴリのプレイが熱く、ホトケさんのシャウト、伸ちゃんのクールなバッキングと相俟って、ものすごい緊張感です。本家のBuddy Guyに負けていません。
B3、あえてストラトのハーフトーンでスタートするところが斬新です。この曲では伸ちゃんと山岸さんのの掛け合いが聞けます。ラストをMaj7thで締めるところもおしゃれです。
Joe Sampleも取り上げるなどやはり多くのカバーがあるB4,なんと日本語の歌詞で驚きました。自分達のBluesを作るという意気込みの表れでしょうか
どの曲も、アンプ直のノンエフェクトながらものすごい表現力です。
White Bluesのカバーからバンド活動をスタートしたとのことですが、この頃には黒さを吸収した上でオリジナリティが確立されていると感じます。参考になるレコードも限られ、教則本もYoutubeもない時代に、これだけ完成度が高い作品が作られたこと、Bluesへの愛情、探究心、聴くたびにリスペクトという流行り言葉では言い表せない感動、感嘆、畏敬、感謝などが入り混じったなんとも言えない気持ちになります。
このレコードを聴かなかったら、自分は、Bluesにハマることも、レコードを買い集めることも、ギターに夢中になることもなかったかもしれません。拙いながら、自分のギター演奏やバンド活動でも随分参考にさせていただきました。
伸ちゃん亡き後、このメンバーでのライブは聴くことはできないのが残念ですが、他の作品含めて一生の宝物です。

Emotional度♡♡♡♡♡  
Bluesy度♡♡♡♡♡
Mellow度♡♡♡♡ A4,A5,B1、Mellowです。
酒のお供度♡♡♡♡♡  

オリジナルも載せました。聴き比べてください。(B5以外)

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West Road Blues Band / Blues Power (1975) - 塩次伸二、山岸潤史” に対して5件のコメントがあります。

  1. 縞梟 より:

    こんにちは。
    コメントありがとうございます。

    高校生でブルースに目覚めるとは渋いですね。
    (レコード買うために修学旅行の空き時間を利用するとはかなりの猛者)
    私なんか高校の時はマイケル・シェンカー命でしたよ(苦笑)

    基本的に質問などはこちらにさせていただこうと思います。

    塩次さんについてなのですが、70年後期から80年代中頃まで主だった音楽活動が
    確認できないのですが、このブランク時期は何かあったのでしょうか?
    分かる範囲で教えていただけると幸いです。

    1. domon@guitar より:

      返信遅くなり申し訳ありません。

      該当の時期は、白人ブルーズのコピーから脱して本当のブルーズを目指したいと活動を始めたWest Road B.B.の
      実質的な創設者でありリーダーでありながら音楽性の相違や音楽ビジネスへの嫌悪感から脱退していまいましたが
      脱退後は、決してブランク時期ではなく、渡米して現地でBluesをプレイしたりもしており、
      音楽やギターはそれまで以上に真剣に取り組まれていたようです。
      (ホトケさんや山岸さんによると塩次さんはこと音楽に関しては求道者と言っていいほどの完全主義者で、コピーも自分のプレイも
      音の一つ一つをニュアンスまで含めて研究していたとのことです。二人とも非常に怖い存在だったと語っていました。)
      一方で相当の頑固者で、時代や流行に迎合することは全くなく自分が納得しない限りプレイしないため、
      非常に使いにくかった人(今風に言えばめんどくさい人)だったらしく、レコード会社から声をかけられることは
      なかったようです。
      従い、しーちゃんブラザースやダウンホーマーズなどのセッション盤や気心の知れた旧友の数少ないレコーディングセッションでの
      音が聞けるのみで、地道なライブ中心の活動となり陽の当たる世界から遠ざかってしまったようです。(生活的にも困窮したそうです)

      私の知りうる範囲では以上となります。

      個人的には、あれだけの人がこの時期に表舞台で活躍できなかったこと、限られた音の記録を残せなかったことは、
      日本の音楽界において大きな損失だったと思っています。(ついつい熱くなってしまい申し訳ありません)

      ではでは

  2. 縞梟 より:

    こんにちは。

    ご丁寧に詳細な説明ありがとうございます。
    塩次さんは個人的なイメージだと英国のホワイトブルースを模倣していたイメージなのですが
    活動拠点を米に移していたのですね。
    職人気質で使いにくいミュージシャンだったというのは人間的な意味で興味深いですが(笑)
    ご指摘の通り、油が乗っていたであろうこの10年間は空前のギターブームでしたから
    公式な音源を残していないというのは勿体なかったですね。

    1. domon@guitar より:

      私の書き方が悪くすみません、補足訂正させてください。
      渡米していたのは78年か79年のそれほど長くない期間で
      それ以外は日本構内でのライブ活動中心でした。
      ただ、渡米時は現地のブルーズマンとセッションを重ね、一目置かれた存在だったようです。

      逆に私は塩次さんにはホワイトブルーズのイメージは全くなくて(そもそも私自身が歪みギターが好きではなく
      ホワイトブルーズやブルーズロックを全く聴いていないので比較しようがないのですが。山岸さんのサウンドですら
      Too Muchに思える時があり、カミナリなど聴ききたくないものもあります)、ごく初期こそオールマンなどを
      コピーしていたものの、学生時代にNHKのテレビ放送でBuddy Guyを見て衝撃を受けた後は
      ブラック一筋だとおっしゃっていました。実際、T-BoneやB.B.系の少しJazzが入ったBluesを
      ナチュラルトーンで弾かせると、日本では右に出る人はいなかった、そして今でも超える人はいないと
      思っています。弊ブログでも取り上げさせていただいた"Cookin With B3"を聴いていただけると
      イメージいただけると思います。アンプのリバーブすらもかけないのに物凄い表現力です。

      ではでは

  3. 縞梟 より:

    こんにちは。

    重ね重ね丁寧に補足情報ありがとうございます。
    なるほど土門さんと私のギタリストの好みの違いはギタートーンにあるようですね。
    (私が好きなギタリストは大半が歪系ですから(笑)

    私が塩次さんにだぶらせているホワイトブルースのイメージは歪の少ない
    70年代のクラプトンやピーター・グリーンだったのですが、ご指摘のナチュラルトーンの
    ブルースギターで今思いつくのは60年代のウエス・モンゴメリー、ジョージ・ベンソン、
    グラント・グリーンぐらいで塩次さんをホワイトブルースと形容するのは
    間違っている気がしてきました(苦笑)
    (PS)
    ご紹介いただいた「Cookin With B3」は初リーダー作なのに1993年とかなり遅い作品なんですね。
    購入しようと思ったらなかなかのレア物で中古で高値がついていましたが
    頑張って探したいと思います。

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