Tony Z / Kiss My Blues (1997) – Cornell Dupree

Dupreeの円熟のプレイが聴けるBlues アルバムです。

 1. All Alone
 2. It's All The Same
 3. 15 Years
 4. This Tear's For You
 5. You Are My Everything
 6. You Ain't Who You Think You Are
 7. Voodootize Me Baby
 8. Soul Talk
 9. Communicate
10. If You Ever Need A Friend





Tony Zの'97年リリースの作品です。Tony Zって誰?トニー谷の兄弟?ネット上にもあまり情報がないのですが、'52年Bostoでn生まれ、10代半ばから盛り場で音楽活動を始め、Funkバンドへの参加、Bluesmanとのレコーディングやツアー、自身のバンドなどでハモンドオルガンを中心にキーボードをプレイしていたようです。なお、そろばんはプレイしていなかったようです。(若い方にはなんのこっちゃ?という感じかと思います。俺もリアルタイムではありません。)本作は自身名義のソロとしては2作目に当たり、Bernard Purdie(Ds)、Chuck Rainey(B)、Lenny Pickett(Tower Of Powerに在籍したSax)など豪華なメンバーとレコーディングされました。(レコーディング自体は2年前の'95年のようです。)ヴォーカルも際立った個性はありませんが味があり、自身のB3もバックの演奏も円熟と激情が同居する素晴らしい内容で、なぜ2年もお蔵入りになったのでしょうか?
本作も、下北UnionのJazz安棚に並んでいるところを救出しました。元々オルガン好きなのでジャケットにビビッときて、タイトルにはBluesの文字、裏を返すとDupree始めその筋のレジェンド達、しかも500円、これは買うしかないでしょう!

<ギターの聴きどころ>

DupreeはYamahaのシグネイチャーモデルと思いますが比較的硬めのサウンドで全曲に参加しています。しかし、そこはDupree、必要以上に弾きまくったり常に弾きっぱなしということはなく、バッキングもソロもリラックスした雰囲気を保ちつつ、時に激しく、時にゆる〜く、要所で絶妙なプレイをしています。
A1のスロウ(こういう曲を頭に持ってくるとは!)では、オルガンとコードを分担しつつ、オブリを挟む音数少なめのプレイです。
アップの2ではコードを崩したBluesバッキングでヴォーカルを盛り上げ、1コーラスのヴォーカルの後、3コーラスのロングソロを披露します。タメとツッコミ、マイナーとメジャーのペンタの組み合わせ、チョーキングなどで伸ばすところ、畳み掛けるところ、見事な組み合わせのソロです。(でも一発録りなんでしょうね?)
Funk Bluesの3、普通の感覚だったら9thでのコードカッティングとなるところでしょうが、リズムもフレーズも見事に崩していて、セオリー通りでないところが興味深いです。
4はJazzyなフィーリングを持つ曲で、ここでもコード、オブリを軽〜く、しかし情感たっぷりにプレイしています。中盤以降のヴォーカルに呼応するオブリのさりげないセクシーさに聞き惚れてしまいます。ソロも必要以上に盛り上げず、焦らすようなプレイで歌います。日本では、塩次伸二さんがこういうプレイを得意としています。
ポップなフィーリングも持つ5では、軽いタッチでコードバッキングで、若干テンポは早いですがGadd Gangでの「Way Back Home」に通じるプレイに感じました。
マイナー調の6, Bobby Blandあたりが取り上げそうな雰囲気を持ちますが、後半は熱を帯び、主役のハモンドや、サックスのソロははもちろん、PurdieとRaineyのコンビネーションも見事です。Dupreeは対照的に淡々とリズムを刻みます。
Kim Wilsonのアンプリファイズドハープがフューチャーされた7でも小音量で淡々とバッキッキングしています。
Walter "Wolfman" Washingtonっぽい8でもハネるリズムの上で淡々とリズムを刻みます。エンディング付近でオブリを入れて遊んでいて微笑ましいです。
マイナー調のスロウ9ではコードバッキングの合間にヴァイオリン奏法やハーモナイズ度チョーキングも交えたオブリを組み入れ、フリーにプレイしています。
Jazzyなラスト10、8分を超える長尺でサックスのロングソロのバックで多彩なバッキングを効かせた後、フィンガーボードの上で弦をこねくり回すような独特のタイム感とニュアンスを持ったイナたいソロが聴けます。

この手のアルバムにしてはサウンド全体がハイファイで各楽器のサウンドが鮮明に聴こえます。(PurdieとRaineyの低音も迫力です)。
これからJazzyなBluesギターを聴いてみたいという方には、前作の”Get Down With The Blues”(こちらではDuke Robilardが味のあるギターを弾いています)と併せて、おすすめです。




Emotional度♡♡♡♡ 
Bluesy度♡♡♡♡♡
Mellow度♡♡♡♡ 甘ったるくはないです   
お酒のお供度♡♡♡♡♡  

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