Phil Upchurch / Phil Upchurch (1978)

一際メロウな作品ですが、本作も決して燻し銀のプレイではありません。

A1. Strawberry Letter 23
2. Free
3. Good Times
4. Church Street Music


B1. It's Almost Five
2. Foolin' Around
3. Cyrenna




Phil Upchurchの'78年の作品です。ソロ作としては9枚めに当たり、T.K.傘下のMarlinよりリリースされています。プロデュースはレーベル繋がり?でA面を新進気鋭(当時)のJohn Tropea、B面をサイド担当のご縁?で人気絶頂(当時も)のGeorge Bensonが担当、マイナーレーベルであるにも拘らず、二人のプロデューサーの人脈と自身の共演歴から、Will Lee, Chuck Rainey、Steve Gadd, Harvey Mason、Richard Teeなどものすごい豪華なメンツがバックを務めています。(でもB3はUpchurch自身がドラムやベースをプレイしていて、本人がやりたかったのか、予算が足りなくなったのかどっちでしょう?)
A1~A3は有名曲のカバー、A4はTropeaの曲、B面はUpchurchのオリジナルという構成です。
David T.同様セッションミュージシャンとしての活動が忙しすぎたのか、実力の割にはソロ作が多くありませんが、自身の名を冠した本作、Bensonの成功など当時の時流もありメロウな曲を揃え、本人としてもレコード会社としてもやる気も売る気も満々の意欲作だったと思われます。しかし、CD化も遅れるぐらいなので、セールスや世間の評判的にはいまいちだったのでしょうか?
私の購入は90年代終わり頃ですが、無理して買った記憶がないのでそれほど高い値段ではなかったと思います。黒を基調としたジャケットデザインのせいでしょうか?日本盤は発売されなかったようですが、数年後だったら絶対ジャケット差し替えの裏技が発動していたものと思われます。

<ギターの聴きどころ>

曲はポップでも、プレイはいつも通りの変幻自在のプレイです。Suggie OtisのA1(ブラジョンのカバーの方が有名?)はインストに生まれ変わっていますが、オクターブのテーマに、チョーキングやトレモロピッキングを織り込み、1曲目から快調に飛ばします。
A2はDeniece Williamsのヒット曲のカバーです。イントロでは、お得意のヴァイオリン奏法をクイクイ言わせ、メロウに迫ります。後続者のように深いエコーなどを掛けず、スライドやチョーキング(チョークダウンも)でさまざまな表情を作り出すところに職人の心意気を感じます。その後もGaddとWill Leeの作るGroove乗って弾きまくります。
Gamble & HuffのA3、ここでもイントロはヴァイオリン奏法です。本編に入ると一人二役で、前半はナチュラルトーン、後半ではコーラスがかかったサウンドでプレイします。
A4はTropeaの作です。エフェクトのかかったリフのスリリングなムードとメロウなテーマとの対比がユニークです。後半はBluesyに引き倒します。
A面はリズムギターはTropeaです。
B1は,Breezin'のオマージュなのでしょうか?チョーキングの上がりづらさやピロピロ速弾きもなんとなくBensonを思わせます。でも、イントロはDavid T.っぽい感じもします。
B2もミディアムスロウで、コーラスサウンドでダブルストップでシンセと対話し、テーマを奏でます。どうせならシンセではなく、Bensonのギターでやってほしかったところです。でも個性がぶつかって曲の雰囲気が壊れる?この曲も後半のソロは急にBluesyなフレーズが入って、曲の雰囲気が変わります。左のバッキングもGroovyです。
ラストもBensonっぽい感じでコードを交えてテーマを取ります。B面は、この曲含め、心なしかフレーズがBensonぽい気がします。もしかしてBensonが弾いてるところもある?
他の作品と比較すると全体的にポップでメロウ(特にB面)ですが、いつも通り弾きまくっています。よく比較されるDavid T.、Gale、Dupreeよりも圧倒的に音数が多く、また、休符が少ないため、音が詰め込まれている印象を受けます。トリッキーな要素もあり、毎々書いていますがどうしてこの人が「燻し銀」の評価を受けるのか私には全く理解できません。皆様方は、もっと音数が多くトリッキーなプレイを常々聴いておられるのでしょうか?あるいは私が音数が少なく空間が多い松木さんのようなギターを聴き過ぎているのでしょうか?これだけの情報過多な世の中、一度定着してしまったイメージは本質とは無関係になかなか変わらないものなのでしょう。





Emotional度♡♡♡♡
Bluesy度♡♡♡♡
Mellow度♡♡♡♡
酒のお供度♡♡♡♡

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