Booker T / Evergreen (1974) – David T. Walker

甘さをベースに激しさも熱さも鋭さもあるFunkyなギターです

A1. Jamaica Song
 2. Mama Stewart
 3. Tennessee Voodoo
 4. Flamingo
 5. Song For Casey
 
 
B1. Evergreen
 2. Country Days
 3. Why Me
 4. Front Street Rag
 5. Lie To Me

 
 
Booker Tの'74年の作品です。名義はBooker Tですが、もちろんMG'sを率いたBooker T.Jonesです。MG'sとしての活動、奥様との共作による作品リリースの後に制作された初のソロ作となります。MemphisからL.A.に活動拠点を移し、ほとんどの曲が自作で、自らプロデュース、アレンジ、演奏(ギターやベースも)ヴォーカルを担当、David T.など西海岸のミュージシャンをバックに録音されています。
Booker T.は、高校の時に”Otis Blue”を聴いて衝撃を受け、そのバックバンドがMG'sであることを知り、ベスト盤(日本盤)を1500円で買いました。その頃はFusionなどのインスト物、SoulやBluesも聴き始めていたのですが、MG'sのベストはどちらの側でもない中途半端な印象を持ってしまい、良さがわかったのはStaxのSoulを集め始めた上京後で、本作もようやく聴き込むようになりました。Otisトリビュート盤でのDavid T.との共演もあり、Booker T絡みの作品を見かけるたびにチェックすることとなりました。本作はその流れの中で、90年代の後半に立川の珍屋で発見、裏ジャケのクレジットにDavid Tの名前もあり、3000円ぐらいしましたが、無理して?買った記憶があります。同じくDavid.T参加(CarltonやPhil Upchurchも参加)の"Runaway"を直前に買っていて、とても気に入っていたので!






<ギターの聴きどころ>

個別曲のクレジットはありませんが、聴いた限りではDavid T.はA4,A5,B1,B2,B5の5曲に参加しています。
後に飲料?のCMにも使われた爽やかなA1,ブルーグラスっぽいA2,タイトルほど怪しさを感じないA3,いずれも主役の柔らかく暖かなヴォーカルナンバーを経て、インストのA4が始まりました。ダイナミックなオルガンサウンドでスタートします。David T.は左からコードカッティング+ダブルストップスライドのオブリで盛り上げます。ソロは、入りこそオルガンのテーマを引き継ぐものの、すかさずアドリブに移行し、オクターブ、ハイポジションでの小刻みなフレーズ、縦横無尽なダブルストップ、ハンマリングプリングなど必殺技を次々と繰り出します。一旦テーマをオルガンに戻した後のセカンドソロも、同様にメリハリのあるフレーズを予測不能にフリーに繰り出し、甘さと激しさが入り混じったプレイで曲を引っ張ります。エンディングの後ろ髪を引くようなオクターブも見事です。
続くスロウのA5は、テロリロとオクターブでイントロを甘く奏で、Booker T.の豊かでソフトな声が続きます。(この入りのメロディがDerek&DominosのThorn Tree In The Gardenに聴こえました)主役のヴォーカルに寄り添うようにオブリを交えながらバッキングをしていると思いきや、サビの後の繋ぎでは、激しく低音を弾くようなパーカッシブなプレイも入ってきて驚かされます。オブリのネタの豊富さ、タイミングの絶妙さ、フレーズの抑揚、甘さ、素晴らしいの一言です。 
B面の頭、禁煙ではあまり聞く事ができない左のコードカッティングからスタートします。ところどころにオクターブやダブルストップ、3連を散りばめ一筋縄ではいきません。この曲ではソロは右からでピッキングの強弱とタメとツッコミの組み合わせで粘っこさ、力強さを演出しています。2回目のソロも右からで、抑えめに入りますが、後半の盛り上がりでは低音弦をバチバチ言わせるフレーズから高音弦のチョップなど1回目のソロより更に激しさを増しています。オルガンとギターの掛け合い、随分と熱く激しいエバーグリーンです。
気だるい雰囲気を簡易させるB2,リフやオブリ、コードの刻みなどをフリーに組み合わせてBluesyな雰囲気を高めています。どの曲でもそうなのですが、4、8、16などの譜割では表現できないプレイです。
ラストのスロウのB5、左のBooker T自身と思われるアコギに対し、右からパーカッシブなオブリで応答し、ともすれば甘くなりすぎてしまう曲調にスパイスを加えています。
アルバムを通じて、Byrdlandのフロントをアンプ(この時代はPrinceton?)で若干トレブリーにセッティングし、ピッキングの強弱と位置、左手のコンビネーションで実に多彩な音を生み出しており、ノーエフェクトでこのような表現力豊かなプレイを聴くと「もうワウは必要ない」という自身の言葉も頷けます。コンプレッサーは絶対にかけるな、というエンジニアへの指示も!
とかくメロウな面だけが強調されるDavid T.ですが、本作では(同時期のソロ""Press On"同様)甘さをベースとしながら、激しさも、熱さも、鋭さもあるFunkyなプレイがたっぷり聴けます。CDでも復刻されているようなのでぜひ聴いてみてください。



Emotional度♡♡♡♡♡
Bluesy度♡♡♡♡
Mellow度♡♡♡♡
酒のお供度♡♡♡♡♡

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