Gentle Thoughts / Gentle Thoughts (1977) - Lee Ritenour
鬼気迫る一発録りです。実はWW とRPの影響大?
A1. Captain Caribe 1-2. Getaway 2. Chanson 3. Meiso B1. Captain Fingers 2. Feel Like Makin' Love 3. Gentle Thoughts Lee Ritenour率いるGentle Thoughtsの'77年の作品です。セッションギタリストとして多くの作品に参加していましたが、本作はリーダー作としては3作目にあたり、昨日の”Guitar WorkShop Vol.3”同様ダイレクトディスク方式によりレコーディングされています。ダイレクトディスク方式自体は以前より存在しており本作が初めてではありませんが、当時流行していたFusionで導入してヒットさせ、広く世間に知らしめした功績は大きいと思います。日本企画により右制作された本作、企画の中ジャケやインナーには長々と誇らしげに詳細な情報が記されています。Ritenourはこの方式が気に入っていたのか、次作の”Sugar Loaf Express"など数枚のダイレクトディスク盤を残しています。 自分とバンドメンバーの演奏技術によほどの自信があったのでしょう。穏やかそうな表情のRitenourですが、単に優等生であるだけでなく、結構チャレンジ精神も旺盛だったのでしょう。(自己顕示欲や野心も?) しかし、エポックメイキングであった本作もFusionブームの終焉やデジタルレコーディングの普及により徐々にその価値は忘れ去られてしまい、エサ箱の常連となってしまいます。90年代の頭にユニオンで300円ぐらいで購入しました。音の良さは感じたのですが、盤に傷があったため、2年後くらいに100均箱からもう1枚買い足しました。
<ギターの聴きどころ>
Grusin作のA1、1年先行してEarl Klughもプレイしており、本人のセルフカバーに加え、福村博さんもカバーしていますが、本作では、サックスとユニゾンするテーマ、ドライブサウンドでのソロ、サックスソロでのバックでの弾けるようなカッティング、どのプレイもバンド一体となったGrooveを感じさせます。 EW&FのA2,A1からの流れで、ここでもサックスとの掛け合いや力強くキレのあるカッティングが聴きものです。原曲のAl Mckay(この人も335でのカッティング)とタメを張るノリです。 A3もGrusinの曲で、先にArt Farmerが取り上げていて、Galeがねちっこくイントロから攻めていましたが、ここではErnie Wattsのフルートが幻想的なムードを作り、ヴォリュームペダルを効果的に使ったRitenourのテーマへ引き継ぎます。フルートのバックでは、コンプ+フェイザーのポコポコミュートも聴けます。 A4はHarvey Masonの曲で、自身のアルバムにも「Liquid」というタイトルで収録しています。原曲ではTom Scottの泣きのサックスとDavid.Tの流れるようなソロが印象的でしたが、ここではErnie WattsのサックスとRitenourのギター(テーマ、カッティング、ミュートプレイを自在に組み合わせています。)、Anthony Jacksonのベースソロが、美しくそして情熱的です。 タイトルが自身のニックネームともなったB1、イントロのカッティングからキメ、テーマ、ソロとも各楽器の鬼気迫るインタープレイの連続で、手に汗握るスリリングな展開が続ます。一発録りでここまでやり切るとは!演っている方も聴いている方も寿命が縮まりそうです。 クールダウンするようにB2が始まります。Marlena姐御など多くのカバーがありますが、Ritenourはこの曲ではL5にチェンジしたと思われ、ナチュラルサウンドでしっとりと歌い上げます。もちろん上手いんですが、DupreeやDavid T.と比べると淡白に感じてしまいます。 タイトル曲のB3,Hancockのカバーです。リズムが強烈な原曲に対し、ここではテンポを落とし上品に?仕上げています。テーマやオクターブソロは箱鳴りを感じるのでこの曲もギターはL5と思いましたが、後半はハイポジを使っているのでどこかで335に持ち替えたのでしょうか? 両面で無音部も含めて40分弱、Ritenourやメンバーの器用で多彩なプレイ、緊張感もリラックス感も感じられる一発録りでした。プレイのみならず、録音中にギターの持ち替え、エフェクトのオンオフ、ピックアップの切り替え、ヴォリューム、トーンのコントロールなど、一連の操作を流れを遮ることなくやってのけるとはRitenour恐るべし! そして、あまり触れられることはないのですが、Ritenourのバッキングプレイ、実はWah Wah WatsonとRay Parker Jr.の影響を受けているように思っているのですが、いかがでしょうか?(この三人、Love Unlimited Orchestraで共演しています) 以下は私の妄想です。(LR = Lee Ritenour, WW = Wah Wah Watson, RP = Ray Parker Jr. (WWとRPが本作を聴いて) RP:WW先輩、アイツ、俺たちのサウンドやプレイパクってますよね!リアピックアップでのシャープなカッティング、俺そっくり! WW:ポコポコミュートや3連のミュートカッティング+グリッサンド(本作でも多用している「ペケぺポーン」と聴こえるやつです)は 俺の真似だよな! RP:あいつ、飲みの誘いは断るくせに! WW:かわいい顔してるけど、実は腹黒いやつなんじゃないか! RP:今度あったらシメましょう!金も払え! (遡って Love Unlimited Orchestraのレコーディングの後) WW:あ〜あ今日も疲れた!Barryのおっさんの巨体と野太い声、1日一緒だと嫌になっちゃうよ! RP:Unlimited Singerの娘誘ったので気分を変えて合コンしましょう!Ritenour君もたまにはどう? LR:(この人たち、遊んでばっかりだな。稼いでるはずなのにだからお金ないんだな・・・)いえ、僕はもっとギターの腕を磨きたいので家帰って練習します。 WW:(ツマンネエ奴だな・・)練習もいいけど、遊ばないといいギター弾けないよ! RP:しょうがない、数合わせにDavid T.さん誘って、3対3にしますか!ではいきましょう! LR:あの人達はキリギリスだな・・・きっと付き合っても碌なことはない・・・僕はアリのようにしっかり練習してアメリカ一のギタリストになるんだ。でも、人間性はともかくとしてあの人達の個性的なプレイは下品だけど魅力だな。しっかり吸収して、僕なりの上品さを加えて使っていこう! そしてRitenourのプレイに取り込まれていきましたが、その後は二人と顔を合わせないよう細心の注意を払ったとのことです。めでたしめでたし (フィクションです)
Emotional度 | ♡♡♡♡♡ |
Bluesy度 | ♡♡ |
Mellow度 | ♡♡♡♡ |
酒のお供度 | ♡♡♡♡ |
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