Phil Upchurch – Whatever Happened To The Blues (1992)
驚きの連続でしたが、全てがUpchurchの Bluesです!
1. 6 To 4 2. The Tide Keeps Lifting Me 3. Angel Eyes 4. Blues March 5. Love And Peace 6. All Blues 7. Whatever Happend To The Blues 8. I Don't Want Nobody To Give Me Nothing 9. I'm Going Down Slow 10. Nice To Have You Around 11. Fade To Black Tie 12. Sweet Woman Blues Phil Upchurchの'92年の作品です。プロデューサーはBen Sidranに委ね(2と8のみRicky Peterson)、その関係かBen Sidranが主催するドイツのレーベルGo Jazzからのリリースです。これまでのキャリアで作り上げた人脈による豪華なメンツがバックを務め、多くの曲では個性的なヴォーカリストを迎えた歌ものとなっています。(ヴォーカルが本業でない人に歌わせているところも狙い通りなのでしょうか?) '93年リリースの"Spirit Traveler"以降、Upchurchのソロ作、セッション参加作を集め始めたのですが、本作はその前年ということもありしっかり流通しており、ユニオンの中古コーナーで1000円前後で購入できました。ジャケットにはその頃エンドースしていたVestax Phil Upchurch Model(日本製)がバッチリ写っていて、それだけで箱フェチである私めの心は鷲掴みにされました。 ((しかし、インナーにはL5をプレイする写真と謝辞があり、このギターは本作では使われてないかもです。なお、JazzLifeの93年5月号のフルアコ特集で本機が取り上げられていました。当時の定価50万円。現物を見たことがありませんん) しかもタイトルには大好きな「Blues」の文字が!
<ギターの聴きどころ>
早速聴きます。 1、少しテンポを上げて思いリズムになっていますがあれ?これは”Breezin'”に入っていた曲では?自作曲にも拘らずソロの入りがリズムに合っておらず、音程も怪しい?力も入りすぎ?しかし、2分すぎの二度目のソロあたりから指が温まってきたのか、突如としてリズムに乗ってオリジナルのBenson先生ばりに弾きまくります。 2はコンガのみを従えてMavis Staples, Pops Staplesなどのヴォーカル隊のバックで一風変わった伴奏をします。あれ?Bluesは? 3は、イントロからちりめんビブラートやトリルなどの個性的なプレイを取り入れた泣きのフレーズで、「黒い玉置浩二」ことGavin Christopherのヴォーカルが入った後は、ウィスパーには優しく返し、シャウトには激しく返し、寄り添うようにバッキングします。ソロも含め、泣きの中にトリッキーなプレイを入れた独特なプレイで、Johnny "Guitar" Watsonと共通するものを感じました。Brother Jack McDuffのオルガンもいい感じです。7分の長さを感じさせません。この曲でやっと安心しました。 意表をつく選曲の4,タイトル通りBluesとMarchの融合するユニークな曲調で多くのカバーがあり(実は密かに好きな曲です)Upchurchの過剰に熱くならず、またヒネリの効いたプレイにマッチしています。 5はギタリストArthur Adamsの曲ですが、なんとヴォーカルで本人を呼んでいます。朴訥でいい感じの声にSoulギターを知り尽くしたようなUpchurchのギターが絡みます。後半のソロは繰り返しフレーズなどBluesyです。 6はMilesの有名曲で、これまた驚きのヴォーカルバージョン(Oscar Brown Jr.)です。ギターバージョンではCarltonのライブ収録曲を以前に取り上げましたので聴き比べてください。 お待ちかねスロウBluesの7、James Van Burenのヨレた声とUpchurchのタメと泣きのギターがコール&レスポンスします。ここでもソロは音づかいやリズム割が独特です。 JBの8が始まり、驚きが続きます。Clyde StubblefieldとRosie Gainesのヴォーカルの合間にディストーションサウンドのソロが入ります。これもUpchurch? 左のWah カッティングも含めErnie Isleyや山岸さんのプレイのようです。 アーバン感のあるスロウBluesではLes McCannが渋い喉を聴かせます。ピアノは弾かずBen Sidranに任せています。UpchurchはここではノーマルなBluesプレイです。 Country BluesとJazzを融合させたような10ではソロギターで決めます。何を弾いても味わい深い! Funkの11、バックのリズムやサウンドはモダンなのですが、Upchurchのギターは変わることなく我流を貫いています。 Chicago Bluesの12で幕を閉じます。キャリアの初期にはBluesのレコーディングにも数多く参加しており、伝統的なChicagoスタイルのバッキングやソロも絶妙です。 Bluesアルバムを期待しましたが、1枚を通して驚きの連続で、いい意味で期待を裏切られました。コテコテのBluesも数曲ありつつ、時代とともに変化し、いろんな要素を交えたBluesをフルコースで味わうことができました。インナーのUpchurchの「ブルーズは何も変わることなく続いてきた」Ben Sidranの「Upchurchがプレイするもの全てがブルーズ」という言葉通り、All Bluesでした。そんな思いが込められたタイトルなのだと思います。ジャケット以上に心を鷲掴みにされた素晴らしい内容でした。
Emotional度 | ♡♡♡ |
Bluesy度 | ♡♡♡♡ |
Mellow度 | ♡♡♡♡ |
酒のお供度 | ♡♡♡♡♡ |
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